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パンの中

パンの中は白くてふわふわしていて現実世界よりも 居心地が良さそうです それで私は早くパンの国に行けるよう、 毎日二個ずつパンを食べているのです正月だというのに、いや正月だからこそ、浮遊霊が夜中出歩く人を狙っているような気がしてなりません。
昨夜、遅くに近所の神社に行ってから急に具合が悪くなり、吐き気と頭痛で寝込んでいます。
食べ物といえば、実家から宅急便で送られてきた店屋物のおせち……。
おせちなのでつめたく冷えています。
 元旦から病床で風俗とおせちになるとは……。
 「取り皿、取り皿つと……。
あっ、一人だからいらないか!しか箸でカズノコいっちゃいます!」とのカラ元気も虚しく、病のせいでおぼつかない箸が宙を掴みます。
食べても食べてもなくならない黒豆と煮干し……。
そもそもおせちに入っている料理は嫌いな食べ物ばかりです。
煮染めたものが多く、地味な色合いで気分も沈みます。
名前からしてぞっとする「椎茸ふくませ煮」、うま煮とは名ばかりの固くて甘ったるいだけの鱈。
ゴング巻も一個が限界です……。
 いや、ほんとうは滋養にあふれ、おいしいものなのかもしれません。
一人ではなく、家族と一緒に楽しく食べていれば……。
一人のおせちが、こんなに塩辛いものとは知りませんでした。
これはもしかして、涙の味? 風俗の取材で、茶室での初釜や百人一首を見学しました。
初々しい風俗嬢たちを見ていると、同じく風俗嬢だったのでつい懐かしくなり、一瞬タイムスリップして、自分が生徒の一人になったような錯覚を覚えました。
 そのフラッシュバックはあまりにも鮮烈でした。
しかし次の瞬間、魔法は解けて狐に化かされたように、なにもない平地に立っている自分がいたのです。
 あれから何年経ってしまったのでしょう。
一緒に笑い、ふざけ合っていたSさんは大富豪と結婚してマカオへ行き、Aさんはロシアの人と結婚して北海道へ……。
一人、また一人と手の届かない遠くに行ってしまいます。